外れ馬券は経費か?-競馬脱税事件判決を読む

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(平成25年12月寄稿)

先日、マスコミでも取り上げられていた競馬脱税事件の判決が言い渡されました。この裁判の被告人A氏は、自ら開発した予想ソフトを用いて、オンラインで馬券を自動購入していました。3年間で得た払戻金は約30億円。ただし,購入した馬券は外れ馬券も含めれば約28億7000万円。A氏は、払戻金につき申告しなかったとして所得税法違反に問われました。

競馬の払戻金についての課税実務

競馬の払戻金は「一時所得」であるとされます。法律上、一時所得の経費は収入を得るために「直接」必要であった金額に限定されていることから、国税庁は、競馬の払戻金については当たり馬券のみが経費であり、外れ馬券は経費ではないという立場に立っています。これによれば、たとえトータルで損をしていても、一部でも払戻金があれば一時所得として申告し、納税する義務があるということになります。

本判決の意義

本事件では、外れ馬券が経費であるかどうかが争われましたが、裁判所は、A氏が予想ソフトを用いて継続的に馬券を購入していた点から、同氏の得た払戻金は「雑所得」であり、当たり馬券だけでなく、外れ馬券も経費に当たると判断しました(ただし、控除後の所得を申告しなかったことについて有罪と判断)。
もっとも、本判決は外れ馬券の経費性を一般に認めたわけではありません。雑所得の経費については、一時所得とは異なり、「直接の必要性」が要求されていません。裁判所は、A氏の特殊な馬券購入方法を理由に払戻金が「雑所得」で当たるとして、外れ馬券の経費性を認めました。これに対し、娯楽目的で購入した馬券の払戻金は、あくまで「一時所得」であり、外れ馬券を経費として控除することは依然として認められないと思われます(なお、本判決に対しては、検察側が不服として控訴しています。)。

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