株主総会で株主から質問を受けたら

一般企業法務, 法律関係トピックス

 今回は、株主総会における取締役、会計参与、監査役及び執行役(以下「取締役等」といいます。)等の説明義務についてお話しします。
取締役等の説明義務の範囲・程度
 株主総会では、株主から議題に関する特定の事項について説明を求められた場合、原則として、取締役等は説明をしなければならないとされています(会社法314条)。では、どのような範囲・程度の説明をすれば、説明義務を尽くしたことになるのでしょうか。
 説明義務の制度の目的は会議の議題等につき、株主が合理的判断をするための手がかり(付加的情報)を提供する点にあります。そのため,議題の賛否につき、株主が合理的判断をするために「客観的に必要な情報」を説明する義務が課されていると考えられます。報告事項であれば、その内容を理解するのに必要な情報を説明することになります(裁判例では、決議事項については「株主総会参考書類に記載される事項」、計算書類に関する報告事項については「計算書類付属明細書に記載される事項」が説明義務の範囲となるとの見解も示されています。)。
例えば、取締役選任議案であれば、株主が合理的判断をするには、候補者の能力や経歴、適格性に関する情報が必要なので、これを念頭に説明すべきですし、取締役再任議案であれば、従前の職務執行状況を説明することで、経営能力に関する情報を提供することになるでしょう。
提供される情報が十分であるか否かは、一般的・平均的株主にとって合理的判断が可能か否かで判断されますので、質問株主の知識や理解が深いからといって説明を簡略化すべきではなく、また、質問株主の理解力に難がある場合に、とりわけ詳細な説明が求められるわけでもありません。
回答を拒否できる場合
 ただし、会社法314条は、議題に関して必要な情報を提供し、質疑応答の機会を保証するという一般原則を確認したにすぎず、株主に特別の情報開示請求権を付与したものではありません。このような趣旨から、説明を求められた事項が、①株主総会の目的である事項に関しないものであるとき ②企業秘密など、説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害するとき ③その他正当な理由がある場合として法務省令に定める場合(調査を要する事項、説明により株式会社その他の者の権利侵害となる場合、繰り返し説明を求める場合、その他正当な理由がある場合)には、取締役等は説明を拒否することができます。もっとも、③のうち、調査を要する事項については、会日より相当期間前に(実務上は前日までに)書面による質問があった場合や、調査が著しく容易な場合等には説明を拒否することはできないので注意が必要です。
誰が説明すべきか
会社法314条の趣旨は、株主に対して決議のために必要な情報を提供することにあり、取締役の適性を試すことではありませんから、株主から「A社長が説明せよ」との指名があったとしても、A社長が説明する必要はなく、当該情報につき詳細を知る者が説明すれば問題ありません。必要な場合には、履行補助者として従業員、弁護士等に説明を行わせてもよいと考えられています。
以上

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