【建物の老朽化を理由とする立退き要求に応じる義務があるか?】 (弁護士 熊谷健吾)  

弁護士ブログ, 熊谷弁護士

食べ歩き(飲み歩き?)が好きで,仕事の帰りに新しいお店を発見すると,ふらっと入ってしまう性分があります。そんなふうにして,お気に入りとなったお店が何軒かあるのですが,ご無沙汰していたあるお店に久々に行こうとしたら,残念なことに無くなっていました。店主の方によれば,老朽化したビルの取壊しを理由に立退きを求められたので,立退料などはもらわずに応じたとのことでした。ビル取壊し後にマンション建設の計画があるようでした。

最近,札幌市内のあちこちで,こういったマンション建設のための再開発の話を聞きます。再開発のためには既存のビルの取壊しが必要となりますから,デベロッパー(開発事業者)はテナントとの間で立退きに向けて交渉を始めます。そういった交渉の中で,デベロッパー側が「建物の老朽化」を理由に賃貸借契約の解約や不更新を主張することが見受けられます。そして,私の行っていた店の店主のように無条件,あるいは少額の立退料で立退きに応じるケースは少なくありません。
しかし,借主の地位は,借地借家法という法律によって保護されており,貸主側からの解約や不更新の主張は,簡単には認められません。「建物の老朽化」を理由とする解約や不更新のためには,倒壊の危険があるなどの事情が必要とされており,修繕によって対処できるのであれば,テナント側が契約の継続を主張できるケースがほとんどかと思います。

pagetop