自賠責保険と任意保険の違いについてご存じですか

交通事故, 法律関係トピックス

自動車保険には,自賠責保険と任意保険がありますが,その違いはご存じでしょうか。

必ず入らなければならない「自賠責保険」

自賠責保険は、正式な名称を自動車損害賠償責任保険といい、自動車損害賠償法という法律によって、保険契約の締結が強制されています。

自賠責保険が未加入の自動車を運行の用に供した場合、違反者は1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金に処せられることになります。さらに保険証明書を備え付けずに自動車を運行の用に供した場合も、30万円以下の罰金に処せられます。

このように保険の加入が強制されているのは、自動車の運行によって、人の生命身体が害された場合の損害賠償を保障する制度を確立することで、被害者の保護を図り、あわせて自動車による運送の健全な発達に資するためです(自賠法1条)。

そのため、いわゆる人身事故の損害(人損)のみを填補することを目的としています。

加入は、あなたの意思に任せられる「任意保険」

これに対し、保険契約を締結するか否かが任意とされている保険を任意保険(正式名称を任意自動車保険)といいます。平成10年の保険自由化以降は、様々な内容の保険が存在し、いわゆる人身傷害補償保険を含めた保険が主流となっているようです。任意保険の種類とその内容については、次号以降で触れていきたいと思います。

任意保険は、人損を填補するだけでなく、対物事故の損害(物損)も填補するものです。したがって、人損については、自賠責保険と任意保険の両方でカバーされますが、両者の関係はまず自賠責保険により損害が填補され、それでも足りない場合にその不足額を任意保険が填補するという関係にあります。

被害者の救済を重視しますが、過失に対する要件も厳しくなっています

被害者の救済を重視する自賠責保険では、事故当事者双方の過失割合を厳密に検討する任意保険と異なり、被害者の過失相殺の要件を厳しくしており、被害者に重大な過失がある場合には、20から50%の割合に限って過失相殺減額を認めるという取扱となっていますし、保険会社の免責事由も制限されています。さらに、被害者が直接保険会社に対し保険金の支払を請求できる直接請求制度が認められています。

ただし、支払われる保険金の金額は発生した損害額全額ではありません。自賠責保険の保険金等の支払基準が法律により定められており、損害保険料率算出機構という機関が基準にしたがって算定する金額により支払われます。実損額より不足する分については、加害当事者に支払ってもらうか、任意保険でカバーする必要があります。

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