連載 知的財産権⑤  実用新案の基礎知識

法律関係トピックス, 知的財産法務

前回まで、3回にわたり商標権の基礎知識について解説しましたので、今回からは、実用新案の基礎知識について解説したいと思います。

実用新案とは

実用新案制度とは、「物品の形状、構造又は組合せに係る考案」を保護する制度であり、「発明」を保護する特許ほど「高度」なものでなくても良いとされています。

1993年改正以降、審査を行うことなく実用新案登録がされることになったため(無審査主義)、形式的な要件が備わっていれば全て登録されることになりました。

また、2004年改正以降、実用新案の保護期間は、出願から10年間(改正前は6年間)とされました。

実用新案技術評価書とは

無審査で登録されることから、実用新案のなかには無効なものも含まれていると考えられます。

そこで、実用新案を有する者は、特許庁から発行を受ける実用新案技術評価書を提示して警告した後でなければ、実用新案権侵害を理由として差止請求や損害賠償請求をすることができないこととされています。

実用新案技術評価書とは、実用新案の有効性を判断する材料として、審査官が新規性、進歩性などに関する評価を行い、請求者に通知するものであり、誰でも請求することができます。

実用新案権侵害の効果

実用新案権者は、故意又は過失により権利を侵害した者に対し、損害賠償を請求することができるほか、侵害行為の差し止めを請求することもできます。

また、実用新案権侵害には刑事罰もあります。

専門家に相談を!

このように、実用新案法は頻繁に改正が行なわれており、その実用新案が何年に登録されたのかによって、権利の強さがまったく異なる場合があり得ます。また、実用新案技術評価書の記載方法も独特のものであり、お世辞にも分かり易いとは言えません。

実用新案が問題になった場合には、迷わず、実用新案に詳しい弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。

つづく

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