連載 知的財産権⑧  特許の基礎知識3

法律関係トピックス, 知的財産法務

今回は、特許発明の実施について説明します。

特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有します(特許法第68条)。

その意味は、他人がその特許発明を実施することを禁止(差し止め)することができるという排他的権利であることを指します。そのような排他権があることによって、特許権者は、その特許発明を独占的に実施することができることとなる場合があります。

ただし、特許発明が他人の特許発明を利用する場合(利用発明、改良発明)は注意が必要です。改良発明とは、他人の特許発明の要件を全て充足した上、新たに要件を付加した特許発明を言います。そのような改良発明を実施するためには、必然的に他人の特許発明を実施することを伴います。したがって、その他人の許諾を得なければ、特許権者と言えどもその改良発明を業として実施することはできません。このように、特許権者であっても特許発明を実施できない場合もありますので、覚えておかれると良いでしょう。

発明の「実施」とは、「物」の発明であれば、業としてその「物」を生産、使用、譲渡等、輸出、輸入又は譲渡等の申出をする行為を指します。また、「方法」の発明であれば、業としてその方法を使用する行為を指します。「物の生産方法」の発明であれば、方法を使用する行為のほか、その方法により生産された物について「物」の発明同様の行為が実施に含まれることとなります。

なお、「業として」とは家庭内実施を除く趣旨とされています。

続く

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