【為替変動が賠償金にも反映されます】(弁護士 橋田)

弁護士ブログ, 橋田弁護士

アメリカ合衆国大統領選挙でトランプ氏が当選しました。大国の大統領選挙の市場への影響は大きく,選挙当日のドル円(USD/JPY)相場はトランプ氏優勢の報を受けていったん101円台まで下落したものの,他の経済指標による影響も相俟って本原稿執筆で111円台まで急騰しており,クロス円,株式や先物等とともに,絶好の買い時を掴んだ方もいらっしゃるのではないかと思います。

さて,現在数十万米ドルを詐取された事案を担当していますが,詐取された時点では1ドル約100円,訴訟提起時点の昨年4月は1ドル119.73円となっていました。このような場合の問題として,①被害者は外貨である米国ドルで請求すべきか,それとも円貨で請求すべきか,②仮に円貨で請求する場合,裁判所が,判決で,いつの時点の為替相場に基づいて円換算して給付金額を決定するかという問題があります。
①については,被害者は,米国ドルで払えと外国通貨の支払を請求するか,円換算した日本の通貨の支払を請求するかの選択権を有するとされています。仮に,米国ドルでの支払を求めて提訴すれば,判決は,「○○米国ドルを支払え」となります。
②については,民法第403条は,「履行地における為替相場により」と定めるのみで,履行地における何時の為替相場によるべきかについては明らかにされていません。この点,最高裁は,履行期(弁済期)の相場ではなく,現実に履行をなすとき(支払時)の相場,すなわち事実審の口頭弁論終結時の外国為替相場によってその換算をすべきであるとしました。そして,通常,口頭弁論終結時から判決言渡しまでの間にはタイム・ギャップがありますが,後判決言渡しまでの間に為替相場の変更があっても,これを判決において斟酌する余地はないとしました。

上記の私の担当事件では,提訴前日の終値である1ドル119.73円で円換算して円貨で提訴していますが,判決では,弁論終結時のドル円相場に基づいて給付金額が決定されることになり,現時点では給付金額は未定ということになります。

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