【よりよい選択のためのサポート】(弁護士 村田)
10年近く前のことになると思いますが,事務所にご高齢の方がやってきました。弁護士に話を聴いてもらいたいとおっしゃり,その方のご相談に乗ることになりました。
その方は,当時80歳を少し超えるくらいの年齢の方で,数年前に奥様を亡くされて一人暮らしをされており,お子さんたちは遠方で生活しているとのことでした。
子どもたちから,子どもの家の近くにある介護施設に入ったらどうかと言われたが,自分は施設に入りたくない,どうしたらよいかというご相談でした。
人生相談のようなお話しでもありましたが,その方が気にしていることと,お子さん達が気にしていることをじっくりと聴くことにしました。
どうやら,子どもたちは80歳を超えたので,火の取り扱いを間違って火事になったら…,体調を崩して家の中で倒れてしまっても誰にも気づいてもらえなかったらどうしよう…という心配をしていたようです。
他方,ご本人は自分はまだまだ元気だからそんなことは余計な心配だ,子どもたちに迷惑をかけるのは嫌だ,という思いを持っていました。
どちらの考えもお互いを思ってのことでしたので,役所の介護福祉課に相談をして一人暮らしでも大丈夫だというお墨付きをもらって子どもたちと話してはどうか,何日か子どもたちと一緒に生活をして心配ないことを理解してもらうようにしてはどうか,などとお話しをしました。
このようなお話しを3~4時間した結果,その方は子どもたちの言うことを聞いて施設に入るとおっしゃいました。その方の考えがなぜ変わったのか私には分かりませんでしたが,その後幸せな生活を送っていただければと思い,その方の決断を尊重して見送ることにしました。
この方との出会いを通じて,ご高齢の方が幸せな老後を送るために弁護士は法律だけではなく,介護や福祉についても勉強をしなければならないと強く感じました。
これからも,ご高齢の方が幸せな生活を送っていくためのサポートを弁護士として行っていきたいと考えています。