はずれ馬券は経費かどうか?? 第2の巨額事例から。
(平成27年10月寄稿)
一昨年、3年間で28億7000万円もの馬券を購入し、30億円の払戻しを受けた大阪在住の会社員の脱税事件が、競馬ファンのみならず世間の耳目を集めました。「払戻金は一時所得、経費は当たり馬券のみ」とする国の主張と、「払戻金は雑所得、外れ馬券も経費」とする会社員の主張が対立した事件ですが、今年の3月、最高裁は納税者側に軍配を上げ決着を見ました。
そのスケールの大きさに驚嘆したところですが、今年5月、さらに驚くべき事件の判決が言渡されました。当事者は道内在住の公務員男性。6年間に購入した馬券72億7000万円、払戻金78億4000万円、得た利益5億7000万円という途方もないものでした。裁判所は国の主張を認め、課税処分取消を求める男性の請求を棄却。
同じく馬券に関する裁判でありながら結論が異なったのは、馬券の購入方法の違いにあります。大阪の会社員は、自ら開発した予想ソフトによりオンラインで馬券を自動的に購入。裁判所は、会社員が得た払戻金は「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であり、雑所得に当たるとして購入馬券全体の経費性を認めました。他方、今回の事件の男性は、予想ソフト等を用いず、独自の馬券理論により馬券を購入。裁判所は、この購入方法は一般愛好家と同じであるとし、男性の得た払戻金は一時所得と認定し,外れ馬券の経費性を否定しました。
購入規模でいえば、今回の事件は大阪の事件と同等以上であり、予想ソフトの使用の有無によって結論が異なるというのは釈然としないところです。男性側は控訴したようですので、控訴審の結論を待ちたいと思います。