勝訴率6.8%
(平成27年8月寄稿)
6.8%―これは税務訴訟における納税者の勝訴率です。国税庁がこの6月に公表した統計資料によれば、平成26年度における国税に関する訴訟事件での納税者の勝訴率(一部勝訴を含む)は6.8%とされています。これは平成23年度の13.4%に比べると約半分まで落ち込んだことになります。また、訴訟発生件数を見ると平成26年度で237件。平成23年度では391件ですから3年間で4割近く減少したことになります。
これらのデータの見方は様々ですが、訴訟発生件数そのものが大きく落ち込んでいることからすれば、平成23年以降、税務署は「無理な課税」をしなくなったと言えるかもしれません。ちなみに、平成23年は世間の耳目を集めた武富士贈与税事件の判決が言い渡された年であり、最高裁は武富士の元役員に対する贈与税の課税を違法と判断。この結果、国から元役員に対して約2000億円もの還付金が支払われました。
そうは言っても、上記勝訴率のデータが示すとおり、納税者が勝訴することの難しさは依然変わっていません。弁護士は通常「勝ち目」が一定程度あると判断して訴訟を起こしますので、一般には原告側勝訴の割合が高い傾向にありますが、その中にあって「6.8%」という数字は厳しいものです。もっとも、必ずしも税務に精通した弁護士ばかりとは限らず、正しい見通しで訴訟に臨んでいないケースも想定されます。裁判で争うには事実関係、法令、裁判例、学説等について十分に調査を行い、勝訴の可能性を事前に見極めることが重要です。あくまで私の「体感」になりますが、正しい見通しを持った上で訴訟に望んだ事案については、決して「勝ち目」は少なくないと思います。