消費税転嫁対策特別措置法
(平成26年7月寄稿)
この4月から消費税が8%になりました。買い物の際にレシートを見て増税を実感された方も多いかと思います。消費税は最終的に事業者が納税しますが、本来的には販売価格に転嫁され、消費者が負担することが予定されるものであり、実質的に事業者の負担となるものではありません。ところが、この「価格への転嫁」が円滑に実現できなれば、実質的に事業者が消費税を負担することになります。
小売業者が消費者の購買意欲の低下を避けるため、増税後も税込価格を据え置くということは実際に考えられますが、これにより利幅が減少し、実質的に増税分を自ら負担することとなります。これ自体は企業の経営判断の問題ですが、仮に利幅を維持するために仕入業者に対して税込での仕入価格の据え置き(つまり増税分の値下げ)を求めた場合、今度は仕入業者が増税分を負担することになり、消費税の価格への転嫁が阻害されてしまいます。
このように消費税の価格への転嫁を阻害する行為を禁止するため、昨年10月1日付で消費税転嫁対策特別措置法が施行されました。この法律は、中小企業や小規模事業者が取引先に商品を納入する際に、大規模小売事業者等が、減額や買い叩き、増税分の価格への上乗せ拒否などを禁止しています。
また、この法律では、「消費税は転嫁しません」「消費税率上昇分値引きします」といった表示をする行為なども禁止しています。税込の価格を維持すること(つまり本体価格を増税分だけ値引きすること)自体は違法ではありませんが、このことを宣伝、広告することはこの法律に違反する可能性がありますので注意が必要です。