消費税額を左右する「労働者性」の問題

税務訴訟・税務関連業務, 税務

(平成23年12月寄稿)

消費税は、「課税標準額(売上高×税率)」から、仕入れに含まれていた税額、すなわち「仕入税額控除(課税仕入額×税率)」等の控除を行うことによって計算されます。「仕入税額控除」の対象となる支払いを「課税仕入れ」といいます。
消費税において「ある支払いが課税仕入れに当たるか」という点は、税額を大きく左右する最大の関心事です。特に問題となるのは、ある役務(サービス)提供に対する対価が、「給料」なのか「外注費」なのかという点です。というのは、労働者から労務提供を受けることは「課税仕入れ」ではなく、給料につき仕入税額控除は認められませんが、外部から有償で役務の提供を受けることは「課税仕入れ」であり、対価である外注費につき仕入税額控除が認められるからです。

「労働者性」は実体から判断されます

「給料」と「外注費」の区別は、すなわち労働者か否かの判断は、一見容易に思えるかもしれませんが、そうとは限りません。例えば、自分のトラックを持ち込んで特定企業の運送業務に従事するドライバーは、当該企業の労働者でしょうか。それとも個人事業主でしょうか。たとえ「請負」「委託」等の契約書が交わされているとしても、直ちに労働者性が否定されるわけではありません。労働者か否かは、業務の内容や遂行の仕方について指揮命令を受けているのか、勤務の場所・時間の規律を受けているのかといった実体から判断されます。このように「労働者性」は、労働法規の適用の有無(残業代の支払の要否、解雇の可否等)に関わるのみならず、税務コストにも関わる重要な問題といえるのです。
経営者は、通常、事業コストを勘案して「外注か内製か」という戦略上の意思決定をします。しかし、「労働者に当たるか否か」はあくまで法的判断ですので、経営者の思惑に反して、当局や裁判所によって労働者性が肯定され、未払賃金の支払を命じられたり、あるいは本来支払う必要のない税を納めていることがあります。このような事態を未然に防止するためには法的リスクについての検討も不可欠ですので、一度専門家に相談されることをお勧めいたします。

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