飲酒と統計について (弁護士 小寺)
飲酒に関する厚生労働省研究班の調査結果が、最近、新聞で取り上げられていました。
報道によれば、厚生労働省は、「健康日本21」において成人の適度な飲酒量として、1日のアルコール量を20g程度と設定。これを超えて摂取する人が多く問題であるとのことです。
この報道の中で、「認知症」とアルコールの関係が記載されていました。
「認知症」の人では、7分の1は飲酒の習慣があり、1日の飲酒量は日本酒にして1~3合が29%、3合以上が5%とのことです。
また、「高血圧」「脳卒中」「狭心症」「心筋梗塞」では、3分の1が酒を飲み、日本酒にして1~3合が46%、3合以上が4%を占めているとのことです。
ところで、日本酒1合はアルコール量20gであり、上記の「健康日本21」で定める適度な飲酒量の範囲内となっています。適度な飲酒量である日本酒1合の場合は問題ないのか、1合でも問題あるのかは、上記データからは不明です。
上記発表からすれば、飲酒しない方が健康にいいこととなります。
しかし、厚生労働省のホームページe-ヘルスネットの「アルコールと認知症」において、これに反する記載があります。
ここでは350mlのビールを1週間に1~6本程度の飲酒した方が認知症の危険性が最も低いという結果となっています。飲酒しないまたは大量飲酒する人より上記のように少量飲酒する人のほうが認知症の危険性を下げる、言い換えれば少量飲酒は認知症の予防になる可能性を示唆していますと記載されています。
以上の通り、今回の統計の発表に矛盾があります。統計の結果を見る場合には、常に注意が必要だと思います。
実際問題として、人の体質は個人毎に異なるものであり、一律にアルコールの摂取量を決めるのは合理的とは言えないでしょう。
酒は百薬の長といいます。各人が体質に合わせて適度にたしなむことが健康にいいのでしょう。「適度」かどうかは各人の自己責任で判断することになるのでしょうが・・・。