【観戦者の楽しみ方】(弁護士 小野田)
夏の高校野球は今真っ盛りですね。私はそれほど熱心な観戦者ではありませんが,「高校野球大好き芸人」のような類の番組は大好きです。あのような高校野球の楽しみ方というのは,昭和プロレスファンからすると,プロレスの楽しみ方と似ています。単に素晴らしいプレーを振り返るのではなく,観戦者として,例えば「因縁の果てにある名場面」といった形で意味を見いだすこと。芸人のそのストーリーの見せ方が上手ければ上手いほど面白いし,また,自分なりの意味付けをしていくという過程自体もまた楽しいのですね。
ところで,甲子園で初めてのタイブレークの当事者となったのは旭川大高と佐久長聖でした。元々は選手の負担軽減,特に延長引き分け再試合によって連投となる投手の負担軽減を考えて導入されたタイブレーク。しかし,実際に見てみると,投手はノーアウトでランナー2人を背負った状態から始めなければならず,勝つためにはそこからランナーを帰さずにアウトを3つ取らなければならないわけですね。これはこれで投手に今までにない重い負担を負わせることになって酷じゃないかという気もしました。
もうひとつ,冒頭で述べたような楽しみ方をしているものからすると,劇的な結末といったものが少なくなってしまうのではないかと,ちょっと寂しくなりました。送りバントの後に犠牲フライで1点,というパターンが多くなりそうですし,仮にサヨナラ満塁弾ということになっても,ランナー無しからの満塁ホームランとはやはり価値が違うように思います。
ただ,いかに不条理なルールであろうとも,与えられた枠の中で,ときにはその枠からややはみ出しながらも,徹底的にやり切る,そのようなプレイヤーの姿の中に,観戦者として意味を見いだし,感情移入し,物語を紡いでいく,というのも昭和プロレスファンの楽しみ方です。その意味では,タイブレークという,ある意味不条理ともいえる制度から新たな物語が生まれてくるのではないか,という期待もちょっとあります。