【法務局で遺言書の保管が出来るようになりました。】(弁護士 小寺正史)

小寺弁護士, 弁護士ブログ

 自筆証書遺言を法務局が保管する制度が7月からスタートしました。
 大変有益な制度ですが、まだ利用が進んでいないようです。
 法務省はホームページで、保管申込の方法について詳細に案内していますが、簡単にご紹介します。

                             
1 法務局における自筆証書遺言の保管制度の概要
  概要は法務省が作成した下記の図のとおりです。

                                          
2 この制度のメリットは次のとおりです。
① 法務局で保管するので、紛失あるいは火災等で焼失の心配がありません。
   自筆証書遺言は原本でなければなりませんので、保管には注意が必要でした。この点、法務局で保管していれば安心です。
② 死亡後に、遺言書を保管していることを相続人等に法務局から通知してもらえます。
  遺言書を作成したことを相続人に知らせていなくても、死亡後に法務局から、相続人に通知指定もらうことができます。 
③ 裁判所の検認を受ける必要がありません。
 自筆証書遺言の場合裁判所の検認が必要ですが、法務局の保管制度を利用した場合、裁判所の検認が不要となります。
 裁判所の検認を受けるには、相続に関する戸籍謄本を全て集めることが必要となるなど煩雑で、しかも、期間も必要となります。
 裁判所の検認が、自筆証書遺言のネックとなっていましたので、この点は大変便利になりました。

                                   
3 この制度を利用するためのポイント
①  保管前に遺言の内容について弁護士などのチェックを受けること。
 この制度は、遺言書を預かるだけで、内容については関与しません。
 遺言書の中には、記載が不備で相続登記ができないなどのトラブルが生ずることがあります。このようなことのないように、保管する前に弁護士などの専門家に相談し、チェックを受ける事をお勧めします。
② 手続きに1時間程度要することを見込んで、法務局に予約すること。
 保管手続きは予約制です。法務局に電話あるいはホームページから必ず予約してください。
保管の手続きには、本人確認などが慎重に行われます。所要時間には1時間程度の余裕を見て下さい。

                             
4 公正証書遺言をお勧めする場合
① 相続人間で争いが生ずる可能性がある場合
 この制度は、遺言者が自筆証書遺言書を法務局に持参して保管してもらいます。法務局では、持参したものが遺言者と同一かどうかのチェックはしますが、その遺言書を遺言者が記載したかのチェックはしません。
 したがって、後日、遺言者の自筆かどうかや、本当に遺言者の意思なのかなどについて争いが生ずる可能性があります。
 公正証書遺言では、公証人が本人確認をし、また遺言の内容についても確認をします。相続人間で紛争が生ずる可能性がある場合は、公正証書遺言の方がいいでしょう。
② 本人が直筆で遺言を書けない場合
 この制度は、自筆で遺言書を書くことを前提としてます。したがって、手が不自由で書くことができない場合は利用できません。
 公正証書遺言の場合は、公証人が本人の意思を確認できれば作成できますので、直筆で遺言を書けない場合は公正証書遺言を利用することになります。

                                  
5 具体的な、自筆証書遺言保管の方法
 「法務省 遺言書保管」で検索しますと、「法務省:法務局における自筆証書遺言書保管制度について」が表示されます。
 これをクリックすると、法務省の詳細かつ分かり易い説明が表示されます。
  詳細は、ホームページで照会ください。

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