【コロナ関連給付金と差押禁止について】(弁護士 細谷)

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 新型コロナウイルスの猛威は今なお続いておりますが、これまでに個人や事業者を対象とした各種の給付金が支給されています。
 このうち、個人に対し支給される特別定額給付金、子育て世帯臨時特別給付金、ひとり親世帯臨時特別給付金及び新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金については、支給対象者への支援に向けた給付であること等から、法律(本年制定された令和二年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律及び令和二年度ひとり親世帯臨時特別給付金等に係る差押禁止等に関する法律)によって、差押えが禁止されています。
 しかし、判例上、差押えが禁止される債権等であっても、預貯金口座に入金された後に預貯金債権自体が差押えられた場合、差押禁止の効力は及ばないとされています。
 そのため、給付金が受給権者の預貯金口座に入金された場合において、当該預貯金債権が差し押さえられた場合には、原則として、預貯金債権のうち給付金が入金された分も含め差押えの効力が及んでしまいます。
 このような場合、「差押禁止債権の範囲変更の申立て」を行い、差押禁止の範囲を拡張したうえで、差押えを一部取り消してもらうよう申立てをすることができます。
 裁判所は、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情(口座に入金された給付金の性質等も含まれます)を考慮して、差押えを一部取り消すか判断します。
 他方、持続化給付金等の事業者向けの給付金に対する差押えの禁止については、国会審議中ではありますが、現時点で法律は制定されておりません。
 この点について、令和2年11月19日、神戸地裁伊丹支部は、既に持続化給付金が支給対象者の預金口座に入金された後、預金債権が差押えられたため、差押債務者が差押禁止債権の範囲変更の申立てを行った事案において、持続化給付金は事業の継続を支え再起の糧とすることが目的であり、給付対象に現実に確保されなければ目的を実現するのは困難であるとして、差押えを一部取り消す決定を出し、注目されています。
  

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