【コロナ禍をきっかけに、IT化が加速した民事裁判。】(弁護士  小寺 正史)

小寺弁護士, 弁護士ブログ

 コロナウイルスの感染拡大により、社会に様々な影響や変化が出ています。
そんな中で、裁判所はどうなっているかと、質問を受けることがあります。
 残念ながら裁判所においても、裁判官や職員が感染しています。しかし、そのために裁判所の機能が停止したということはありません。裁判官が感染した場合、裁判官は自宅待機となりその間は業務をできません。これは一時的なことであり、裁判所全体としては裁判機能に支障が出ているということはありません。

          

 実はコロナ以前にも、民事裁判のIT化が検討されていました。さらにコロナウイルスの感染対策として、対面での業務を避けることが必要となったことから、民事裁判のIT化の利用が加速し、現在の民事訴訟法を前提とした上で、Webを利用した裁判が実施されています。

          

 民事裁判においては、原告と被告が裁判所に出廷して、公開の法廷で裁判をすることが原則です。したがって、弁護士は、原告あるいは被告の訴訟代理人として裁判所に出廷して、法廷で裁判を行うのが原則です。

 民事裁判は、原告が訴状を裁判所に提出し、裁判所がこれを受理することにより、被告に訴状が送られ、その後、裁判が開かれます。従前は、第1回目の裁判では原告が訴状を述べ,被告が訴状に対する反論を主張し、第2回目に被告の反論の主張に対する原告の反論を行うといったように、裁判所に出廷して法廷で争点を明確にし、その後証拠調べを行っていました。

          

 現在では、民事裁判のIT化が進められ、裁判所への出廷を最小限にする方向で裁判実務が行われています。法廷で裁判を行う前に、テレビ電話会議システムを利用するなどして、相互の主張を行い、争点が明確になった後に、裁判所で証拠調べを行うケースが増えています。したがって、東京などで行う裁判でも、東京の裁判所に出向くのはごく僅かとなっています。なお、争点が明確になった段階で和解が成立し、1回も裁判所に出向かないで終了するケースもあります。

          

 今年5月に民事裁判の手続きをIT化するための法律が成立しました。これにより、2025年までに順次民事裁判のIT化が進められます。この具体的な内容については、後日ご案内させていただきます。

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