【ネットゲーム依存症対策に一石を投じる】(弁護士 小寺 正史)
子供たちがインターネットやコンピューターゲームに熱中し、それが高じて依存症となることもあります。この問題は、勉強をしないことによる学力低下の問題だけでなく、ゲームに没頭することによる睡眠不足から起こる健康上の問題も懸念されています。このため、保護者や教育現場は児童生徒の指導に大変苦慮しています。
これに一石を投じたのが香川県のネット・ゲーム依存症対策条例でした。県議会は県を挙げて取り組むべきとの考えで、賛成多数でこの条例を制定しました。これには多くの賛成がありましたが、一方で、条例まで制定するのは行き過ぎとの批判もありました。
この条例については当時、高校生だった男性たちが、ゲームの利用時間は本来自分で決めるべきで、憲法で保障された自己決定権やプライバシー権を侵害していると高松地方裁判所に訴えました。
同裁判所は、令和4年8月30日、条例の目的は合理性があり、憲法に違反しないと判断し、原告の請求を棄却しました。
この条例について裁判で問題とされたのは、第18条の保護者の責務の内容で、子供と話し合うなどしてルール作り等を行うこととし、その際、18歳未満のゲームの時間を1日60分(学校休業日は90分)、スマートフォンの利用は中学生以下が午後9時、それ以外は午後10時までを目安とするよう保護者に努力を求めるとのことでした。努力義務で、罰則の規程はありません。
この条例は香川県のホームページから閲覧することが可能ですが、上記保護者の努力義務の他に、県や学校の責務、国との連携なども規程されています。この条例は、ネット・ゲーム依存症対策として大変よく検討された内容と思います。
条例で保護者に努力義務を課することが相当かどうかはともかくとして、社会としてこの問題について真剣に検討する必要があると思いました。