【相続人不存在と特別縁故者の制度】 (弁護士  小寺 正史)

小寺弁護士, 弁護士ブログ

 最近、少子化の影響で、相続人がいない状況が見受けられるようになりました。また、本来、法定相続人はいたのですが、相続放棄により相続人がいない場合も生じています。
 相続人がいない場合は、その財産は国庫に帰属します。
 しかし、本来相続人としては該当しないが、特別の事情がある者には、国庫に帰属させる前に、分与することが相当と考えられます。民法では、このような特別の事情のある者を「特別縁故者」として相続財産を分与する制度を設けています。
 例えば、兄弟が亡くなり、その後、兄弟の子(甥・姪)の世話をしていたところ、その子どもが亡くなった場合、本来、伯父は相続人ではありませんが、特別縁故者として相続財産の分与を請求することが可能です。
 
 特別縁故者とは次のアイウのいずれかに該当する人です。
  ア 被相続人と生計を同じくしていた者
  イ 被相続人の療養看護に努めた者
  ウ その他被相続人と特別の縁故があった者
 なお、相続人が相続放棄したことにより、相続人が不存在となった場合、放棄した相続人が特別縁故者として、改めて相続財産の分与を求めることは可能です。
 家庭裁判所は、特別縁故者から相続財産の分与の申立があった場合、相当と認める場合に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができます。
                     
(国庫に帰属させる手続き)
 相続人が不存在の場合、自動的に国家に帰属するものではなく、一定の手続きが必要です。この手続きは、これまで相続財産管理人が行っていましたが、民法が改正され、令和5年4月からは、相続財産清算人が手続きを行います。
法改正が目前に迫っていますので、相続財産清算人の業務をここで紹介しておきます。
 相続財産清算人が相続財産を国庫に帰属させるための手続きは概略次のようになります。
  1 利害関係人が家庭裁判所に相続財産清算人の選任の申立をする。
  2 家庭裁判所が相続財産清算人を選任する。
  3 相続財産清算人は,次の業務を行う。
    ①相続人の調査
      相続人が本当に不存在か確認します。相続人が見つかれば、任務は終了し、
     管理している相続財産は相続人に引き渡します。
      相続人が不存在であることを確認できたら、相続財産清算人としての業務を
     続行します。
    ②相続財産の調査及び管理
    ③相続財産の換価及び債務の弁済
     特別縁故者から相続財産分与の請求があった場合は、その対応
    ④残った財産の国庫への帰属手続き
                                      以上

pagetop