【弁護士業務とAI】(弁護士 橋田)
最近,試験的に業務にAIを導入しています。ロゼッタT4OO(ティ-・フォー・オー・オー)という自動翻訳システム,LegalForceという契約書レビューサービスです。
ロゼッタT4OOは,渉外法務に必須とも言われるシステムで,ジャンル毎に翻訳を最適化することができ,私であれば「法務」と設定するか,その下位分類である「契約書」と設定することにより,より精度を高めることができます。
いくつかの英文契約書を翻訳してみましたが,85%程度はそのまま使える和訳文となっている印象です。残りの15%程度は私が修正しなければなりませんが,85%程度の省力化ができるというのは非常に業務効率化につながります。
ロゼッタのT-4OOの開発以降,少なくとも翻訳業務では,TOEIC950点程度の英語力は,市場価値をほとんど持たなくなったと考えられます。
次にLegalForceは,契約書を独自のAIでレビューするもので,契約類型(売買基本契約,業務委託契約 etc)と立場(売買であれば,売主側か買主側か)を指定して,レビューボタンをクリックすると一瞬で,注意点,脱落点の指摘が表示されます。
仕組みはよく分かりませんが,立場に応じたモデル文例と比較対照して回答をたたき出している印象を受けますので,契約書の非定型性,独自性の程度によって有効性が異なるため,何%程度が使えるということはいえません。
しかしながら,まずAIレビューで問題点を洗い出した後に,その他の問題点を分析していくことで,より速く,手厚いレビューができるので,有用であることには間違いありません。
AIは弁護士に取って代わるかという議論がありますが,法的観点だけではなく,複雑な感情の機微を読み取って最適解を導き出すことが求められる弁護士の業務全体をAIがまるごと代替することはないと思います。もっとも,上記のとおりAIを利用することで大きな業務効率化が可能な分野もあるため,我々の業務プロセスに大きな変化がもたらされることは間違いのないところです。