【医師の丁寧な説明は、紛争を避ける特効薬です。】(弁護士 小寺 正史)
最近は、多くの医師が患者に対し、病気やその治療について丁寧に説明するなど、患者に対して配慮して対応しています。
しかし、一方で、今でも必要な説明を十分にしない医師がいることも確かです。
医師が適切に患者に説明しないために、医師と患者との信頼関係にヒビが入り、トラブルが生じ、私たちに相談を持ち込まれることも少なからずあります。
病院は患者にカルテを開示しますので、相談の際は、カルテを持参される場合があります。依頼を受けた場合は、私たちもカルテを精査しますが、カルテを1枚1枚めくっていくと、たとえ治療上トラブルが生じているにせよ、治療自体は一生懸命行われていることがわかる場合もあります。しかし、医師が治療について患者に十分に説明していないことにより、患者は医師に対して不信感を募らせ、結果として、紛争に発展してしまうようです。
交通事故などの場合は、過失が明解に判断される場合が多く、過失がある場合は率直に認め、保険により損害賠償がされ解決されています。
反面、医療行為の場合は、専門家としてのプライドが、過失を率直に認めることの妨げになっているかもしれません。しかし、医療事故についても、損害保険制度があることからすれば、同様に解決されることが望まれるのではないでしょうか。
治療の結果が思わしくないとしても、病気の特性からのこともあり、全てが医師の責任というものではありません。医師の丁寧な説明のひと言が治療の効果を上げるだけではなく、紛争の防止にもなることを痛感しています。