知的財産権とは?
1 はじめに
近年、「知的財産権」という言葉を良く耳にするようになりました。そこで、これから複数回に渡り、「知的財産権」の基礎知識の解説を連載したいと思います。
2 知的財産権が注目されるようになった理由
「知的財産権」という言葉を良く聞くようになったのには、理由があります。2002年(平成14年)2月、小泉純一郎(当時)首相が、施政方針演説において、「研究活動や創造活動の成果を,知的財産として、戦略的に保護・活用し、わが国産業の国際競争力を強化することを国家の目標とする。」と述べ、いわゆる「知財立国宣言」を行いました。
以後、知的財産戦略大綱の策定、知的財産基本法の成立、知的財産戦略本部の設置等、「知財立国」を実現するための施策が、矢継ぎ早に実施されてきました。
3 知的財産権とは?
「知的財産権」とは、①「発明」を保護する特許権、②物品の形状,構造等に関する「考案」を保護する実用新案権、③植物の新品種を保護する育成者権、④物品の形状、模様、色彩等のデザインを保護する意匠権、⑤文芸、学術、美術、音楽等の創作的表現を保護する著作権、⑥商品やサービスに使用する名称(マーク)を保護する商標権、その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利が上げられます。
上記のうち、①②④⑥は特許庁の登録を要する権利であり、これらを指して、産業財産権と呼んでいます。
4 知的財産権の発想
新しい商品、新しい営業(ビジネスモデル)は、ひとたび世に出ると、誰もが模倣可能となります(自由競争)。
それでも、起業家は、模倣者が出現するまでの市場独占(市場先行の利益)や、第一人者としての信用の獲得等を目指して、新規事業に乗り出そうとするでしょう。
しかし、医薬品のように開発に多くの資本投下を必要とする場合や、デザインのように速やかに模倣が可能な場合には、模倣によって投下資本を回収できなくなる恐れがあるため、新規事業を躊躇することになるかもしれません。
そこで、知的財産権による一定期間の独占という法律的支援を与えることによって、社会経済的なメリットを人工的に作出して、経済政策的に新規事業を優遇しようとするのが、知的財産権の発想なのです。
つづく