連載 知的財産権⑩ 特許の基礎知識5
前回、特許権侵害に当たらない一例として、先使用権について説明しました。今回も、特許権侵害に当たらない一例として、禁反言(包袋禁反言)について説明したいと思います。
発明をして特許を出願した場合、何の訂正も要することなく、すんなり特許が認められることもあります。しかし、特許庁の審査官から拒絶理由の通知を受けることも少なくありません。出願人としては、審査官から拒絶理由通知を受けると、特許を認めてもらうために、意見書や補正書を提出することが多くあります。
例えば、Xが出願した発明「A」は、過去の特許「a」により公知となっているので、特許は認められないという拒絶理由通知があったとします。これに対し、Xが、「A」は、「a」とは似ているが「B」の点で非なるものであるという意見書を提出し、これにより特許登録がされたような場合です。
このような場合に、Xが、「A」には該当するが「B」には該当しないYに対し、特許権侵害であると主張することは許されるでしょうか?誰しも、そのような手の平返しは許されないと思われることでしょう。
このように、特許出願過程において主張や補正を行うことによってはじめて特許を認められた特許権者が、後日、その言に反する主張をすることが許されないという考え方を、禁反言(包袋禁反言)と呼んでいます。
したがって、もし、第三者から特許権侵害との主張を受けた場合には、出願経過の調査が必要です。調査することによって、特許権侵害に該当しないことが判明する場合がありますので、覚えておかれると良いでしょう。
第三者から特許権侵害の主張を受けたり、判断に迷われた場合には、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
つづく