任意後見と財産管理
認知症も出ず、元気はつらつと老後を過ごすことができれば、それに越したことはありません。しかし残念ながら、誰にでも認知症の症状がでたり、そのほかの事情で判断能力が不十分になったりの可能性は否定できません。今回は、元気でしっかりとした判断ができるうちにやれる老後の備えについてお話をしたいと思います。
成年後見制度とは?
判断能力が不十分になってしまうと、自分で生活面の手配や財産の管理を行うことができなくなってしまいます。そこで、判断能力が不十分になってしまった場合に、ご本人を支援するための制度として、成年後見制度が法律で用意されています。
成年後見制度には、大きく分けて二つの制度があります。
一つは、実際に判断能力が不十分になってしまった時点で、家庭裁判所に、ご本人を支援してくれる成年後見人等を選任してもらう法定後見制度です。
もう一つは、ご本人がしっかりとした判断ができる時点で、あらかじめ、将来に備えて生活面の手配や財産の管理を行ってくれる方と契約をしておくという任意後見制度です。
実は、後者の任意後見制度は、自分の老後の生活の在り方を自分で決められるという点で、まさに上手な老い支度のための制度といえます。将来任意後見人になってくれる人を自分で選択し、財産の管理方法や生活面の手配について、細部にわたり取り決めをしたうえで契約するため、自分の希望を存分に反映させることができます。
例えば、女性であれば、仮に認知症になっても、月に1回は美容室に行って身だしなみを整えて生活したいという希望があるかもしれません。また、自分の判断能力が不十分になっても、年に一度は孫達にお小遣いをあげたいという希望を持つ場合もあるでしょう。そんなことも任意後見契約の内容にしておくことができます。
任意後見制度を利用するには?
任意後見制度を利用する場合、任意後見人となる予定の人と任意後見契約をします。この契約は、必ず公正証書で作成しなければならず、契約が締結されると法務局で任意後見契約が締結されたことが登記されます。本人の判断能力が不十分になった場合、本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見監督人(任意後見人を監督します)の選任を申し立てます。任意後見監督人が選任されると、任意後見契約が発効し、任意後見人による後見業務が開始されます。
任意後見人に支払う報酬は任意後見契約をする際に当事者間で決め、任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決めることになります。
また、高齢等のため身体能力が衰えるなどして、自分での財産管理に負担感や不安感を持たれる場合もあるかと思います。そんな時は、信頼できる第三者に対して、財産の管理を契約により依頼する方法があります。これを財産管理契約と言います。
判断能力がしっかりしている場合には、財産管理契約によって財産を管理してもらい、不十分となった場合には、任意後見契約をスタートさせるという二段構えの備えをしておけば安心です。