互いの存続を図る経営統合について

一般企業法務, M&A・組織再編・事業承継・デューデリジェンス, 法律関係トピックス

2つの株式会社が経営統合を行う場合、代表的な事業再編スキームとしては合併がありますが、今回はその他のスキームとして、共通持株会社を創設する方法をご紹介します。

持株会社の定義
持株会社とは、一般的に、他の会社の株式を保有することにより、その会社を支配することを主たる目的とする会社をいいます。独占禁止法では、より具体的に、子会社の株式の取得価格の合計額が、会社の純資産の50%を超える会社(独禁法9条4項1号)と定義されています。

共同株式移転による共通持株会社の創設
例えば、P社とQ社という2つの株式会社が、共通の持株会社であるH社を創設し、2社ともH社傘下の完全子会社となることにより、経営統合が可能になります。そのような共通持株会社を創設する方法としては、P社とQ社とが共同株式移転(会社法727条2項)をする方法が考えられます。
株式移転とは、完全子会社となる既存の会社(P社およびQ社)の全株式を新たに設立する完全親会社に取得させ、代わりにその完全親会社が発行する新株を完全子会社となる会社(P社およびQ社)の株主に割り当てることにより、完全親会社を創設することをいいます(会社法2条32号、772条以下)。
共同株式移転では、当事会社(P社およびQ社)が共同して株式移転計画を作成し、完全親会社(H社)の設立登記の日に、株式移転の効力が発生します。
合併と比較した場合のメリットとデメリット
共同持株会社創設による企業再編は、合併と比較して、①消滅する会社の債務を承継しなくて済み、膨大な簿外債務を承継する危険がない、②P社およびQ社は存続するので、給与体系や労働組合の統合等が通常不要である、③事業単位ごとなど段階的な統廃合が可能である、といったメリットがある一方で、①事業子会社が独立性を強め、経営陣の求心力が低下する可能性がある、②会社間の損益通算ができないため、全体として税負担が増加する可能性がある、といったデメリットがあります。
最後に
事業再編のためにどのようなスキームを用いるかは、専門技術的視点からの慎重な検討が必要となります。経営統合を考えておられる経営者の方は、まずは専門家である弁護士に相談し、将来的な経営戦略を見据えた方針決定を行うことをお勧めします。

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