【相続法改正】(弁護士 久保)
1月16日,法制審議会の民法(相続関係)部会が,民法の相続分野を見直す要綱案を取りまとめました。同案では,新たに配偶者の居住権を保護するための方策が講じられています。
この改正がなされた理由は,次のとおりです。
被相続人が,遺言を残さず亡くなった場合,法で定められた人が,法で定められた割合で遺産を取得します。分割できる遺産については,分割されますが,分割できない遺産は,相続人が共有することになります。共有するものについては,話し合いで分配方法を決めるのですが,そうすると次のような問題がでてきます。
例えば,お父さんお母さん子ども二人の家族がいたとします。お父さんが亡くなると,お母さんが遺産の2分の1を相続し,子どもが4分の1ずつ相続します。お父さんの遺産の中に,家があったとすると,前記の割合で相続するには,家を売って,売却代金をみんなで分けるか,家は誰かにあげるけど,家の共有持分に相当するお金を他の人がもらうということになります。その家にお父さんとお母さんが一緒に住んでいた場合,前者の方法だと,専業主婦で独自の財産を持たないお母さんの住む家がなくなってしまいますし,後者の方法だと,家は残るけどお母さんの生活費がなくなってしまうという事態が発生してしまいます。同じ事態は,その家が誰かに遺贈された場合にも生じます。
もちろん,仲のよい家族であれば,お母さんそのまま住んでていいよ,お金もお母さんが不自由ない程度に確保した上で,残りを子どもにちょうだいねという話になるのかもしれませんが,世間は,仲のよい家族ばかりではありません。いわゆる「争族」ですね。
そのようなとき,シビアに法律を適用してしまうと,上記のような事態が生じてしまうわけです。そこで,このような問題に対応するために創設されたのが,頭出しの配偶者の居住権を保護するための本改正ということになります。なお,要綱案は,かかる居住権につき,長期のもの(終身タイプ)と短期のもの(主に遺産分割時まで)2種類を考えており,それぞれ要件効果が異なります。
その他にも,自筆証書遺言の要件が緩和され利用しやすくなったり,遺留分減殺請求権行使
後の法律関係はお金ですっきり解決しましょうねといった内容等の相続法改正がなされる予定です。
法律は,日々改正されます。自分が知らないところで,ルールが変わっている可能性があります。重大な法律行為を行う場合は,事前に弁護士へ相談することをお勧めします。