★★【コラムメビウスの輪】「法は家庭に入らず」★★(弁護士小寺正史)

小寺弁護士, 弁護士ブログ

親子間での横領は刑が免除。
ただし、後見人が横領した場合は、親子間でも処罰されます。

 「法は家庭に入らず」とされ、夫婦や親子間の窃盗や横領などの犯罪については特例があり、刑が免除されます。これは、家庭内のトラブルについて、国家が刑罰権の行使を差し控え、親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮によります。

 親が認知症となり、その子が後見人になることはよくあります。後見人である子が、親の財産を横領して使ってしまった場合、親子間の横領行為ですが、後見人という立場での横領にもなります。このような場合に、刑が免除されるかという問題があります。これについて、最高裁判所は、後見人の仕事は公的性格を有することから、刑は免除されないと判断しています(最高裁平成20年2月18日決定)。

 夫婦という場合に内縁の妻について、刑が免除されるかという問題もあります。これについて、最高裁判所は、刑の免除を受ける者の範囲は明確に定める必要があることから、免除されないと判断しています(最高裁平成18年8月30日決定)

(参考条文)
刑法第244条(親族間の犯罪に関する特例)
1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で窃盗の罪又はこの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

刑法第252条(横領) 
 自己の占有する他人の物を横領した者は、五年以下の懲役に処する。
刑法第253条(業務上横領)
 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
刑法第255条(準用)
 刑法第244条の規定(親族間の犯罪に関する特例)は、この章の罪について準用する。

民法第725条(親族の範囲)
 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族

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