【相続法が改正され、預貯金の払い戻しが一部認められるようになりました。】(弁護士 小寺正史)

小寺弁護士, 弁護士ブログ

 従前は、遺産分割が決まらないと預貯金の払い戻しを受けることはできませんでした。しかし、相続法が改正され、預貯金の払い戻しの制度が設けられました。

 今回の改正により、遺産分割前の預金の払い戻しについて、(1)裁判所の関与なしに相続人が払い戻しを受ける方法と、(2)裁判所の判断に基づいて払い戻しを受ける方法が設けられました。
 
(1)裁判所の関与なしに相続人が払い戻しを受ける方法
   相続人は、A及びBの基準により、他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることがでます。すなわち、一つの金融機関について150万円を限度として、基準Aで計算された金額の払い戻しを受けることができます。
① 基準Aの計算式
(相続開始時の預貯金の額)×(3分の1)×払戻しを求める相続人の法定相続分
  ② 基準B
    同一の金融機関に対しては、法務省令で定める額(150万円)を限度とする

(2)裁判所の判断に基づいて払い戻しを受ける方法 
   預貯金債権の仮分割の仮処分については、関係人の急迫の危険の防止の必要があることとされています。
この点を緩和し、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、総合的に事情を考慮して、預金の払い戻しを受ける必要があると認めるときは、他の相続人の利益を害しない限り、貯金の全部又は一部を仮に取得させることができることとしました。
   総合的に考慮する事情とは、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情をいいます。

   この場合、上記(1)の場合のような金額の上限はありません。裁判所が具体的な事情に基づいて判断します。

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